2017 年 11 月 23 日早朝まで降っていた雨が上がり曇り空の大津の自宅を出て京都へ向かいました。

今回は釜山での研修、福岡から釜山に向かう予定になっているため国内各地より13時までに福岡空港に集合する。京都駅での混雑や東海道線のトラブルを考え予定より少し早めに出て、京都駅の新幹線コンコースで旅の「おやつ」を物色する時間を持てたが、レジでの長蛇の列に内心あせり気味でした。人気の「ほうじ茶チョコ」をゲットして新幹線に乗り込みひと段落ついて、図書館で借りた釜山のガイドブックを見ながら早や思いは釜山の食事?に…

その頃、羽田ではひとつのトラブルが発生していたようです。『実は F 江先生が飛行機に乗り遅れて、今釜山に行く便を探しているみたい。連休なのでどこもいっぱい。キャンセル待ちも無理な様子だった』『何とか直接でも良いから釜山に来られるといいのにね』と、やや混雑気味の福岡空港国際線ターミナルで昼食をとりながらの会話でした。

一方、T 先生ご夫妻は地元での予定があり約一時間後に釜山に着く便で来られることと試験を済ませてから合流する H 美先生のお孫ちゃんは翌日到着なので、先ずは 9 名でのスタートになりました。私には初めての韓国、初めて LCC。寒波が来るとの天気予報だったのでダウンのコートの中は暖かいセーターを着こんでいたため暑く感じる初日でした。晴れ女の H 美先生の本領発揮で曇り空の大津から福岡では晴れ間が出てくる絶好の旅行日和となり、約 50 分の飛行中は快適ながらも入国のための書類の記載が終われば到着という短いフライトでした。

ここで韓国のキャビンアテンダントの女性はもちろん男性のお肌が綺麗なことに思わず注目していた C 代先生と私。『美容の国なんだ・・・・』もしかしたら何かお肌によいことが見つかるかもしれないという期待が大きくなっています。釜山空港で迎えていただいた鄭海泳教授とM弘先生を後から到着する T 先生ご夫妻のために残して我々はバスでホテルに移動しましたが、夕方のラッシュに巻き込まれて一時間半以上かかりこれが釜山の交通渋滞の洗礼の始まりでした。ホテルでは横澤先生のお弟子さんたちに迎えていただき先ずチェックインして荷物を置きましょうということになりました。

さて一日目の夕食はフグ料理でした。お店まで徒歩で 10 分くらいかな?という距離を寄り道、遠回り、裏道の狭い市場がある通りで散策していたら30分以上?はしっかりとかかっていましたが、これも旅の楽しみです。店の前では後に着いたメンバーとも合流して、乾杯!!美味しいフグ鍋に料理が並び、と言うか次々に料理が出て食べるのに忙しかったという感想です。この頃には F 江先生が成田から釜山に夜に着くと聞いていましたのでほっと安心して暖かい「ひれ酒」をクピクピと。まだまだ、初日は終わっていません。宿泊ホテル向いのラウンジでは二次会がスタートし、遅れて無事にF江先生が到着し揃った皆で乾杯、おしゃべりと釜山一日目の長い日は楽しく過ぎていきました。

『明日の朝はお粥にしましょう。美味しいお店が近くにありますので案内します。』という言葉をインプットして眠りについたものの、興奮気味だったのか 4 時間の眠りで目が覚めてしまい、部屋でお茶しながら海から昇る太陽を窓から眺めていました。「アワビのお粥」につられてロビーで待つこと20分、朝の苦手なP博士が現れない。『時間がもったいないので、今日はホテルで朝食にしましょう。』「アワビのお粥」は翌日に延期。でも良かったかもしれません。何故なら今夜に到着予定のA美ちゃんも明日なら朝一緒に食べられるもんね!! 

二日目は「日韓交流セミナー」で釜山大学韓医学学校の訪問、韓医学病院見学の予定です。釜山大学韓医学センター長の權博士から釜山大学韓医学センターのお話を伺い国立大学で伝統医学を研究、教育、治療されている環境がうらやましく、韓国の伝統医学を発展させていくシステムにも注目しました。病院の見学では、最上階に調剤室が作られて、スパや鍼灸治療の部屋もあり総合的に対応しておられます。調剤室や生薬倉庫の香りは懐かしく心地よいものでついつい長居してしまいました。また、病院の敷地内に運動器具があり手軽にできることや、敷地が広く樹々に囲まれゆったりした時間が流れる処でもありましたが、横澤先生には移動に少しご負担をかけてしまったのではないか?と心配しています。

時間を有効活用しようとランチョンセミナーという形で昼食の豪華なお弁当をいただきながら午後の発表が始まりました。配られた資料は大変立派なもので “Korea-Japan Joint Symposium:『Traditional Medicine for Healthy Aging』と表紙に記載されていました。

発表はまず横澤博士から。「糖化反応における冠元顆粒の有用性」ということで冠元顆粒が活性酸素をブロックしてアンチエイジング作用がある。また、丹参が慢性腎炎に効果があり、AGEs の産生の過程において凶悪なる CML や CEL を減少させる結果などの報告をいただきました。

続いては金賢榮博士。「キムチの研究」について。これは金先生が学位を取られた研究で『韓国では家庭にキムチの保管用の冷蔵庫がある。』という話から始まりました。キムチには色々な栄養素が含まれておりキムチの種類もたくさんあります。そのキムチが健康に役立つものであるとのことなどビデオを含めて楽しく聞かせていただきました。発表後お仕事の都合ですぐにお帰りになりましたが、またお会いしたときにはゆっくりお話をお聞かせいただきたいとの思いでおります。それでは、いよいよ東海林先生の発表です。「中医学概論」ということで、私たちが学んで実践している中医学の特徴、日本漢方との違いなどを沢山のスライドを作っていただき分かりやすくまとめてくださいました。少々テレながら?すこし緊張?イエイエ、いつも通りの東海林先生でした。

最後は鄭海泳博士の韓医学、「四象医学 原理・治療法」の発表です。韓国においては傷寒論が入ってきて、その後、許浚が東医宝鑑をまとめ李濟馬が四象医学を発展させ、韓東錫や呉袁世が確立させていった。大きく 4 つの体質に分け、その特徴にあった生薬を組み合わせて用いるようですが、生薬の性質も中薬とは少し異なるように思いました。

ここで予定になかったのですが朴博士が大変お忙しい中、今特許を取られて商品開発されている研究の発表をしていただきました。アザミと白タンポポ(韓国特有種のようです)からアルコール性肝炎の治療薬を作っていること、近年韓国では大腸がんの患者が増えてがん患者の一番多いものになった中、シスプラチン(抗がん剤)の使用による腎障害が出てきて問題になっているが、紅花の種子からこの腎障害を防ぐ働きがあることが判ったなどです。

充実した盛り沢山の二日目はまだまだ続きます。四象医学の大家で鄭博士の先輩の先生の薬局見学です。第一印象はすごく若い、鄭先生の先輩とは思えないパワフルな様子です。四象医学を発展させて5つの体質に陰陽を分け10に。その10を内外に分類して20に分類したものを作られました。有名人を挙げて、各体質の特徴を講義いただき実際に診断していただく流れになりました。ここでなぜか私がトップに指名?されて、先生の正面に出て座りました。きっと分かりにくい体質なのでしょう。『机の上に両手を出して』と言われてその通りにすると人差し指と薬指の長さが違う、薬指が明確に長い私の特徴に注目されたようです。どうやら“going My way”タイプの性格のようです。土の陰タイプ。無理をすると心臓に来るので要注意なんてアドバイスをいただきました。「葱」を食べるとよいとのことでしたのでその後意識的に葱を使うようになりました。先生のパフォーマンスは楽しく、我々をひきつけ、美人に弱い面を発揮させての診察室は笑い声に大盛り上がりでした。これも釜山の人情気質なのか高先生に心より感謝申し上げます。

すっかり日が落ちて、薬局での体験にテンションが高いまま、お待ちかねの夕食会場へ移動しました。ここでも、交通渋滞に巻き込まれ、なぜか暖房がかからなかったバスで H 美先生は体調を崩してしまわれたようです。気温が下がって窓側に座っておられたのが良くなかったみたいで大丈夫かな?今夜お孫ちゃんを迎えに行けるかな?そんな思いを皆がしていたようです。

でも、ここで韓国の優れものに出会い救世主となったのです。今夜は、有名高級焼き肉店。テーブルには色とりどりの料理が並び、ここでも横澤先生のお弟子さん達が迎えてくれました。先生のお弟子さん達は大変優秀で皆さん学位を取られており、韓国で教授になっておられます。いよいよお待ちかねの焼き肉の登場です。目の前に七輪が置かれ、上の鉄板にステーキ様のお肉が焼かれていきますが、それを料理バサミで一口大に切って裏返す。焼き頃になるとドーム型になった鉄板の上部から縁に移動させて「食べごろ」という合図でしょうか?たれや塩をつけていただきます。肉を口の中に入れると、とろけるような柔らかさのなかに肉のうまみが感じられ、地元の近江牛の鉄板焼きに並び称される美味なものです。皆さん、しっかりと沢山いただきました。そろそろお迎えの時間になりましたが、H 美先生はいけるのかな?と見ると元気な様子。さすが焼き肉パワー??? 違いました。オンドルだったのです。部屋の床にオンドルが入っていて H 美先生の冷えた身体を温めてくれていたのです。『よかった』無事にタクシーで空港に迎えにいかれました。一方、A 美ちゃんもその頃少しトラブル発生していたようです。飛行機の釜山到着予定が一時間遅れてしまいホテルには深夜到着したようです。

連日晴れている釜山です。三日目( 25 日)も朝陽が海から昇るのを見ながら T 明氏は海岸を散歩されています。今朝はお待ちかねの「アワビのお粥」。ホテルから海岸沿いを散歩しながら徒歩 10 分くらいでしょうか?元祖アワビ粥のお店を発見。店頭には大きな水槽があり、「並、上、特上」のサンプルも出ていました。冷えた身体にアツーイお粥、しみます。海苔やキムチ、などのトッピングを載せ肝がいっぱい入った緑色のお粥を口に入れると幸せが口いっぱいに広がります。『なんと贅沢なのでしょうか!!』

その後、大邱薬令市の韓医薬博物館に到着。見学している博物館内ではチマチョゴリ体験&撮影会で大変盛り上がっていました。『このピンクがかわいい』『これって着られないよ』『大丈夫、上着を着たらわからないから』『エー、前後反対と違う?』 C 代さん、H 恵さんに乗せられて S 子までが参加。そこに A 美ちゃん登場。M 弘先生のカメラはそのかわいい A 美ちゃんのチマチョゴリ姿に釘付けでA美ちゃんモデルの撮影会に変わりました。隣の韓薬市場では赤いきれいな五味子、韓国特有の深い赤色をした枸杞子、当帰や大棗、小ぶりの枳殻なども並んでいました。さて、ここで P 博士とお別れです。忙しい中お付き合いいただき感謝しております。親切で気遣いの P 博士なのでどうか無理をしないで身体に気をつけて研究を続けていただきたいと願っています。今夜は釜山研修最後の夜で、夕食は韓国伝統料理です。ここでハプニングというか大きなトラブル発生です。M 先生が行方不明。『バスに乗っておられましたよ』『入口が分かりにくいので迷っているのかな』『 H 代先生、一緒でしたよね』『居たと思うけど』『電話してみます』ということで無事発見。なぜか一人真っ暗なバスの中に取り残されて・・・・・。でも発見が早くてよかったです。下手をしたら釜山のバス会社の駐車場で一晩過ごすことになっていたかもしれません。無事全員が揃い、伝統料理が懐石料理風に次々とテーブルに出てきます。高級食材、海老や松茸、かわいい高麗人参、自然の優しい味付けが嬉しく、もう食べられないというくらい 14 品目の料理をお腹に収めて、笑顔と共に、釜山最後の晩餐は楽しく、美味しく、にぎやかに過ぎていきました。某研究会ではこの一年の間に「アラ還女子」が三名退職。その三名を含んだ今回の研修でしたが、学ぶことはリタイヤしておりませんのでまだまだ楽しく中医学と関わっていければ・・・・・と思う今日この頃です。

最後になりましたが、横澤先生はじめお弟子さんの先生方、企画連絡にご尽力をいただいた東海林先生、そして一緒に研修させていただいた皆様に心よりお礼申し上げます。そして、また、楽しい企画を待っております。

つたない文章を最後までお付き合いいただきありがとうございました。

2018年晩秋 琵琶湖のほとりより 米倉しく子