日本人の三大死因は、がん、心臓病、脳卒中であるが、そのうち心臓病と脳卒中は、動脈硬化を要因とする病気である。わが国では、食習慣の欧米化や生活習慣の変化,運動不足などに伴って、おなかまわりの内臓に脂肪が蓄積した内臓脂肪型肥満が増加し、糖尿病などの生活習慣病に大きくかかわっている。内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖高血圧,脂質異常のうちいずれか2つ以上を併せもった状態が「メタボリック症候群(内臓脂肪型症候群)」として定義されている(表1)(1)。

表1 メタボリック症候群の診断基準
冠元顆粒薬理解説「1-1 総論」01
メタボリツクシンドローム診断基準検討委員会※(日本内科学会雑誌,94:794-809,2005)
※動脈硬化学会,糖尿病学会,肥満学会,高血圧学会,循環器学会,腎臓学会,血栓止血学会および内科学会の8学会から構成

平成16年の国民健康。栄養調査によると、40~74歳においてメタボリック症候群が強く疑われる人は約940万人、メタボリック症候群予備群と考えられる人(内臓脂肪型肥満に加え、高血糖、高血圧、脂質異常のうちいずれか1つが該当する人)は約1,020万人で、あわせて約1,960万人と推計されている。40~74歳の男性の2人に1人、女性の5人に1人が、メタボリック症候群が強く疑われるか予備群と考えられている。さらに、メタボリック症候群によって引き起こされる病気発症の危険性は、危険因子の数と大きくかかわっており、図1に示すように、危険因子の数が多くなるほど危険度は高まると報告されている(2)。
冠元顆粒薬理解説「1-1 総論」02
図1心疾患危険因子
労働省作業関連疾患総合対策研究班調査
(JpnCricJ,65: 11-17,2001)

何より重要なことは、食生活の偏りや運動不足といった生活習慣の揺らぎが、ドミノ倒しのように種々の病因を引き起こし、高血糖や高血圧,高脂血症といった病態がほぼ同じ時期に生じてくるということである。これらは、メタボリック症候群の段階に過ぎず、下流に存在する動脈硬化症の発症においては、血管における炎症がその病態形成において中心的役割を果たし、これに伴う各臓器での酸化ストレスの上昇がメタボリック症候群の形成において重要な役割を演じていることが明らかにされている(3)。
メタボリック症候群の治療は、現在、生活習慣の改善としての食事療法や運動療法,禁煙指導に加えて、薬物療法がある。しかし、メタボリック症候群の根幹にある内臓脂肪を減少させるような薬剤は無いのが現状で、個々の高血糖や高血圧,高脂血症などのいずれが主体であるかによって、それぞれの異常をターゲットとした薬剤を用いている。そのため、内臓脂肪を減少させるより根本的なメタボリック症候群の治療薬の開発・臨床応用が待たれている。表2に、現在のメタボリック症候群に対する治療薬剤を示した。

表2高血糖および高脂血症治療薬と各種降圧薬のインスリン抵抗性と血清脂質への影響
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