背核と正中縫線核から投射されるセロトニン性神経細胞は大脳皮質や大脳辺縁系を活性化する(2,3)。広範囲な投射は攻撃行動、情緒、食欲、睡眠、摂食行動、性行動、そして自発運動を調節するセロトニン作動系を刺激する(4,5)。このことから中枢のセロトニン作動性系の機能変化は行動において臨床的に重要であると予測される。しかし、セロトニン作動系は、ほかの多くの神経伝達物質と共同で作用するため、セロトニンだけでは行動変化について説明できない。例えば、セロトニン(5ヒドロキシトリプタミン; 5-HT)は一般に人間の大脳皮質において皮質ニューロンの反応性を調節するが、全体的な神経の興奮性はアセチルコリン、アミノ酪酸(GABA)、ノルアドレナリン、ヒスタミン、およびプリン体を介する(6)。

いくつかの研究結果は、これらの神経伝達物質のそれぞれがアルツハイマーや認知症において変化し、人の行動をコントロールすることを示している(7-1′)。このことから、最適な治療効果は、複数の神経伝達物質か神経伝達物質間のバランスを修正することによって得られるかもしれない。

*周辺症状の治療に用いられる薬剤
向精神薬(抗精神薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、睡眠導入剤など),選択的セロトニン再取り込み阻害薬,リスペリドン(統合失調症治療薬)などが用いられる(‘2)。これらの薬剤は、それぞれの病態にあわせて使い分ける。BPSDを改善させることでBPSDによって二次的に低下していた認知障害を改善させることが期待出来る。

*BPSD治療の問題点’
1.薬物代謝能力が低下していることにより、様々な副作用が出やすい。過鎮静状態,嗜眠,流誕などにより、QOLが著しく低下する。
2.抗コリン作用により、便秘,麻痩性イレウスなどが出現する
3.錐体外路症状により、四肢運動協調性障害,歩行困難→転倒により、大腿骨頭骨折をきたし、長期入院→さらに認知症状悪化
BPSDにおける薬物治療は対症療法でしかなく、用量設定が難しいことから使用が難しい。

*BPSDに対する漢方薬治療の利点
1.副作用がない、あるいは少ない
2.予防効果が期待できる
3. BPSDだけでなく、認知記憶障害に対しても効果が期待できる
4.単一あるいは部分的に症状を改善するのではなく、全体的な調整を図ることで、QOL
“ADLを高める。