5月30日のブログ欄で紹介した、The Korean Society of Medicinal Crop Science (韓国薬用作物学会主催の2017年度春季大会、2017年5月18日~19日、優秀賞を受賞)での発表内容について、概説します。

演題タイトルは、“Oligonol, a low-molecular polyphenol derived from lychee fruit, protects pancreas from apoptosis and cell proliferation via NADPH oxidase-dependent ROS production in diabetic rats”でしたが、まず Oligonol (オリゴノール) について紹介します。

名前の由来は、Oligomer Polyphenol を略したもので、生体への吸収率の低いポリフェノールを、高いオリゴマー[分子量の低い重合体 (モノマー、ダイマー、トリマー等)] に変換した低分子化ポリフェノールです。すなわち、植物から抽出したポリフェノールポリマーを、独自の技術によってオリゴマーに低分子化した機能性素材で、生体への吸収性に優れ、安全性も確認されています。

本研究では、糖尿病によって引き起こされる膵臓障害に及ぼす Oligonol の作用について、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットを用い検討した。Oligonol (原料はライチの果実)は 10 mg あるいは 20 mg/kg 体重/日を10日間連日経口投与し、その作用を糖尿病対照群と非糖尿病群で比較評価した。Oligonol 投与群では血清中のグルコース値が低下し、インスリン値が上昇し、膵臓中のインスリンレベルが上昇した。また、膵臓中の NADP(H) oxidase のサブユニット(p22phox, p47phox, Nox-4)、JNK-targeting pro-apoptosis factors (Bax、cytochrome c、caspase 3)の蛋白発現が Oligonol 投与群で低下し、逆にPDX-1とcyclin Eの蛋白発現が増加し、組織学的所見も改善していた。これらの結果から、Oligonolは糖尿病の膵臓において、酸化ストレスとそれに関連したアポトーシスと増殖経路に対し、好影響を及ぼしていることが示された (原著論文はFood & Functionに掲載)。

植物から抽出されるポリフェノールには、通常Oligonolは数%しか存在しないが、低分子化によって著しく増加します。このOligonolは、従来の高分子量のポリフェノールに比べ、速やかに吸収され、より幅広い効能が期待される素材として注目されていますが、横澤グループは柿ポリフェノールに応用し、抗加齢機能製品の開発も着手しています (経済産業省「地域新生コンソーシアム研究開発事業」)。